なぜ、技術士が心理学を学んだのか
私は、技術士(情報工学・総合技術監理)として長年、会社の中で仕事をしてきました。
システムを作る。
システムを運用する。
トラブルに対応する。
仕事を効率よくするための仕組みを考える。
これまで、さまざまな「仕組み」に関わってきました。
ところが、会社で起きる問題を見ていると、仕組みだけでは説明できないことがあります。
立派なシステムを導入したのに、現場で使われない。
楽にするために導入したのに、前の方が良かったと言われる。
仕組みを変えれば解決すると思っていた問題が、実はそう簡単ではない。
なぜか?
そこには、システムよりももっと複雑な「人」がいるからなのです。
人は、仕組みだけでは動かない
人は、単純に「正しいから」「便利だから」という理由だけで行動するわけではありません。
そこには、人の心理が働きます。
代表的なものでは、
1.現状維持バイアス
人は「変化」を本能的に嫌い、現在の状態を維持したいと強く望む心理傾向があります。
2.損失回避性
人は「得をすること」よりも「損をすること」を強く避けようとする傾向があります。
これらからわかることは、
いくら良いシステムを入れても「今のものを変えたくない」と人は思ってしまう。
新しいシステムを使うためには覚えないといけない。なかなか覚えられなかったらどうしよう、という感情も働きます。
心はモヤモヤしてきます。
これが、自分が担当している大事な仕事の場合、どうでしょう。
「こんなことを言ったら怒られるかもしれない」
「失敗したと思われたくない」
「今さら聞けない」
「言ってもどうせ変わらない」
こんな気持ちで、日曜のサザエさんが始まるころには月曜日の会社が憂鬱で仕方なくなってしまいます。
そこで私は、
「仕事の問題を考えるとき、人の心理も一緒に考える必要があるのではないか」
システムだけを見るのではなく、そこに関わる人の気持ちも一緒に考えないといけない、と思うようになりました。
そして、心理学を学ぶ
人の心についてもっと知りたい。
そんな思いから、放送大学で心理学を学び、認定心理士の資格を取得しました。
もともとは公認心理師を目指し、カウンセラーになることも考えていました。
しかし、学べば学ぶほど、人の心の複雑さを感じるようになり、最終的には公認心理師を目指すことをあきらめました。
それでも、心理学を学んだことは無駄ではありませんでした。
むしろ今になって、
「40年間やってきた技術と、心理学は組み合わせて考えられるのではないか」
と思うようになりました。
「技術」だけでも、「心理学」だけでもない
私は、心理カウンセラーではありません。
人の心を治すこともできません。
私ができるのは、これまでの技術者としての経験を生かしながら、人と仕事、そして仕組みの関係を一緒に考えることです。
例えば、
なぜ、会議で意見が出ないのか?
単に「社員が主体的ではない」と考えるのではなく、
- 意見を言いにくい雰囲気になっていないか
- 上司の反応を恐れていないか
- 過去に意見を言って嫌な思いをしていないか
- そもそも会議の進め方に問題はないか
と考えてみる。
なぜ、導入したシステムが使われないのか?
「現場がITに弱いから」と決めつけるのではなく、
- 現場の仕事に本当に合っているか
- なぜそのシステムが必要なのか伝わっているか
- 操作することへの不安はないか
- 「また仕事が増える」と思われていないか
と考えてみる。
つまり、
「人が悪い」
「システムが悪い」
と決めつけるのではなく、
人と仕組みの両方から、問題を見てみる。
それが、私が考える「技術士 × 認定心理士」の役割です。
office HOMIが大切にしていること
私は、問題を見つけて、
「これが正解です」
と答えを押しつけることをしたいわけではありません。
まず、
「なぜ、こうなっているんだろう?」
と一緒に考える。
そして、
「本当はどうなればいいんだろう?」
を考える。
そのうえで、人と仕事と仕組みを少しずつ変えていく。
その先に、
人が自分の力を発揮できる職場
ができるのではないかと思っています。
技術と心理学を、これからの仕事に
技術者として40年間。
そして、心理学を学んだ経験
振り返ってみると、一見まったく違う二つの道でした。
でも今は、
「ああ、ここにつながっていたのか」
と思っています。
システムを導入することだけが目的ではない。
心理学を学ぶことだけが目的でもない。
人が力を発揮できるように、仕事と仕組みを一緒に考える。
それが、私がoffice HOMIで取り組んでいきたいことです。
