最初は「DXの話」だと思って読んだ
デジタルガバナンス・コード3.0という資料をご存じでしょうか。
名前だけを見ると、かなり難しそうです。
「デジタルガバナンス?」
「DXを進めるための企業向けガイドライン?」
私も最初は、政府が考えた難しい取り組みなのだろうと思っていました。
ところが、読んでみると少し印象が違いました。
書かれているのは、単に、
「このシステムを導入しましょう」
「AIを活用しましょう」
という話ではありません。
むしろ、その先にある**「会社をどうしていくのか」**という話です。
そして、そこに書かれていたこの部分に目が止まりました。
DXによって、顧客への価値や売上、生産性、従業員エンゲージメント、人材の確保、サイバーセキュリティなど、さまざまな面で企業価値を高めることができる。
これなんですよ。
DXの目的は、ITを導入することではない。
会社に、何かしらの「良い変化」を起こすことなんです。
「DX=IT導入」ではない
DXという言葉を聞くと、
- AIを導入する
- クラウドに移行する
- ペーパーレスにする
- システムを刷新する
といった話を思い浮かべる方も多いと思います。
もちろん、これらもDXの一部です。
しかし、デジタルガバナンス・コード3.0が示しているDXは、もっと広いものです。
商品やサービスだけではありません。
業務、組織、プロセス、企業文化まで変えていく。
そしてDXを、IT部門だけの仕事ではなく、経営戦略そのものとして考えることを求めています。
「これなんですよ。」
システムを入れることが目的なのではなく、
「この会社をどう変えていきたいのか」
が先にあるのです。
会社をどうしたいのかを考える
ここで一つ、少し当たり前のことを考えてみます。
たとえば、
「AIを導入したい」
という相談があったとします。
では、質問です。
AIを導入して、会社をどうしたいのでしょうか?
「流行っているから」
「他社も使っているから」
「業務を効率化したいから」
もちろん、きっかけとしてはそれで構いません。
でも、本当に大切なのは、その先です。
たとえば、
「社員がもっとお客様と向き合えるようにしたい」
のであれば、AIの使い方も変わります。
「人手不足でも今の仕事を維持したい」
のであれば、AIだけではなく業務そのものを見直す必要があるかもしれません。
「若い人が働きたいと思う会社にしたい」
のであれば、ITだけでなく、仕事の進め方や組織のあり方まで考える必要があります。
つまり、
「何を導入するか」より先に、「何を実現したいのか」がある。
デジタルガバナンス・コードでも、経営ビジョンとDX戦略を結びつけることが重要な視点として示されています。
「今」と「なりたい姿」の間を見る
私は、何かを改善するとき、
「現在はどうなっているのか」
を見ることがとても大切だと思っています。
そして、
「本当はどうなっていたいのか」
「本当はどうあるべきなのか」
を考える。
たとえば、
【現在】
申請書を作るのに30分かかっている
【なりたい姿】
できれば5分で終わらせたい
なら、その差をどう埋めるかを考える。
システムを入れる方法もあるでしょう。
業務手順を変える方法もあるでしょう。
そもそも、その申請が必要なのかを考える方法もあります。
AIを使えるかもしれません。
つまり、
「AIを入れよう」から始めるのではなく、
「この差をどう埋めよう」から始める。
これなんですよ。
デジタルガバナンス・コード3.0でも、現状とあるべき姿のギャップを把握し、DX戦略を見直していく考え方が示されています。
そして、ここに「人」が出てくる
ここまで読むと、
「なるほど。結局、経営戦略とITをちゃんとつなげましょう、ということか」
と思うかもしれません。
でも、もう一つ重要なことがあります。
会社を動かすのは、人です。
どれだけ良いシステムを導入しても、
「使いにくい」
「今までのやり方のほうが楽」
「こんなものを入れて何になるの?」
と思われれば、使われません。
DXには、組織、人材、デジタル人材の育成・確保なども含まれています。
つまり、
仕組みだけでは会社は変わらない。
人が使い、仕事が変わり、その結果として会社が変わっていくと考えています。
「導入して終わり」ではない
もう一つ、私が面白いと思ったところがあります。
DXは、
「計画を立てて」
「システムを導入して」
「はい、終わり」
ではありません。
実際に、
「やってみて、どうなったのか」
を見る。
設定した目標に対して、どこまで進んだのか。
思ったような効果が出ているのか。
出ていなければ、何を変えるのか。
そうやって見直していく。
デジタルガバナンス・コード3.0でも、KPI・KGIなどの指標を用いて成果を確認し、必要に応じて戦略を見直すことが示されています。
これも、技術者から見ると非常に自然な考え方です。
「やったかどうか」ではなく、「何が変わったか」を見る。
結局、DXとは何なのだろう?
ここまでを、できるだけ簡単にすると、
会社の未来を考える
「この会社をどうしたいのか」
↓
今との違いを知る
「現在はどうなっていて、何が足りないのか」
↓
差を埋める
「仕事・組織・人・IT・AIをどう変えるのか」
↓
変化を確かめる
「本当に会社は良くなったのか」
ということになります。
もちろん、実際のDXはもっと複雑です。
デジタルガバナンス・コード3.0も、経営ビジョン、DX戦略、組織・人材、IT・サイバーセキュリティ、指標、ステークホルダーとの対話など、さまざまな観点から整理しています。
でも、最初から全部理解する必要はないのではないでしょうか。
まず、
「会社をどうしたいのか?」
ここがスタートになります。
DXの前に考えること
DXという言葉が広がるほど、
「何のシステムを入れるか」
「どこを効率化するか」
という話になりがちです。
でも、本当に大切なのは、
「そのシステムを使って、何を変えたいのか」
ではないでしょうか。
そして、それを考えるためには、
仕事を見る。
仕組みを見る。
人を見る。
会社を見る。
そのうえで、
「では、ITやAIをどう使おうか」
と考える。
ITやAIは、目的ではなく手段です。
会社を良くするための「道具」です。
これなんですよ。
まとめ
最初に紹介したデジタルガバナンス・コード3.0には、DXによって、
- 顧客への価値を高める
- 売上につなげる
- 生産性を高める
- 従業員のエンゲージメントを高める
- 人材の確保につなげる
- サイバーセキュリティ上のリスクや損失を減らす
- 組織を越えたデータ活用によって新しい価値を生み出す
といった可能性が示されています。
これは、企業にとっては、当たり前のこととして「やらないといけないこと」ではないでしょうか。
難しい「デジタルガバナンス」なんて言葉は置いておいて。
AIやシステムの話も置いておいて。
まず、
「この会社を、これからどうしていきたいのか」
を考える。
そのために、仕事を見直す。
人が力を発揮できるようにする。
必要なところにITやAIを使う。
そして、実際に会社がどう変わったのかを見る。
そう考えると、DXは単なる「ITの話」ではなく、
会社の未来を考えるための一つの方法なのかもしれません。
難しそうに見えた「デジタルガバナンス・コード3.0」。
でも、その中に書かれていたのは、
「この会社を、これからどうしていくのか」
という、とてもシンプルな問いでした。
私はそこに、会社の未来を考えるためのヒントがあるように感じました。

