はじめに
最近、AIやDXという言葉を、あちこちで目にするようになりました。
「うちの会社もDXを進めないといけないのだろうか」
「AIを使えば、仕事をもっと効率化できるのだろうか」
「でも、何から始めればいいのか分からない」
そんな経営者の方も、少なくないのではないでしょうか。
そもそもDXと言われても、ITの専門家ではない経営者にとっては、少し分かりにくい言葉です。
「システムを入れること?」
「紙をなくすこと?」
「AIを使うこと?」
もちろん、それらもDXの一部になるでしょう。
でも、DXを考えるときに、最初からITの知識を身につける必要はないと思っています。
むしろ、最初に考えるべきなのは、もっと経営者にしかできないことです。
経営者に必要なのは、ITの知識ではない
DXというと、
「最新のITを知っていないといけない」
「AIについて勉強しないといけない」
「デジタルに詳しい人間が中心にならないといけない」
と思われるかもしれません。
もちろん、DXを進めていく上では、ITやデジタルの知識も必要になります。
しかし、最初からそれを経営者自身がすべて理解する必要はありません。
なぜなら、
「この会社をどうしたいのか」
を決めることは、ITの専門家にはできないからです。
例えば、
「社員がもっと自分で考えて動ける会社にしたい」
「お客様への対応を、もっと早くしたい」
「無駄な仕事を減らして、本当に必要な仕事に時間を使いたい」
「若い社員が、この会社で働きたいと思える会社にしたい」
こうしたことを考えるのは、経営そのものです。
そして、自分の会社がどんな仕事をしていて、どこで困っていて、何を大切にしているのか。
それを一番よく知っているのも、経営者ではないでしょうか。
DXの出発点は、そこにあるのだと思います。
「AIで何ができるか」より「会社をどうしたいか」
前回、AIについて、
「AIで何ができるか」ではなく、「自分の仕事の何を良くしたいのか」を考えることが大切
という話を書きました。

DXも、基本的には同じです。
「AIで何ができますか?」
「どんなシステムを導入すればいいですか?」
と考える前に、
「この会社を、どうしたいか?」
と考えてみる。
ここがスタートなのではないでしょうか。
経済産業省の「デジタルガバナンス・コード3.0」でも、DXを進める上で、
経営ビジョンとDX戦略を結びつけることが重要な視点として示されています。
つまり、DXはIT部門だけの話ではありません。
経営者が目指す会社の姿と、デジタル技術をどう結びつけるか。
そう考えると、DXという言葉が少し分かりやすくなるかもしれません。
「今」と「こうなりたい」の間を見る
では、会社をどうしたいのかが見えてきたら、次に何を考えればいいのでしょうか。
私は、
「今はどうなっているのか」
そして、
「本当はどうなってほしいのか」
を並べてみることだと思います。
例えば、
「社員からもっと意見を出してほしい」
と思っている。
でも、会議では誰も発言しない。
あるいは、
「お客様への対応をもっと早くしたい」
と思っている。
でも、担当者が毎回同じ資料を手作業で作っている。
また、
「もっと若い人に仕事を任せたい」
と思っている。
でも、必要な情報がベテラン社員の頭の中にしかない。
こうして見てみると、
「理想と現実の間に何があるのか」
が少しずつ見えてきます。
これが、DXを考える上での重要な出発点になります。
そして、ここで大切なのは、
その問題を解決する方法が、必ずしもITとは限らない
ということです。
仕事の手順を変えるだけで解決するかもしれません。
役割分担を変えたほうがいいかもしれません。
情報の共有方法を変えるだけで済むかもしれません。
もちろん、そこにITやAIを使うことで、一気に楽になることもあります。
だからこそ、最初に「ITありき」で考えないことが大切なのだと思います。
DXを難しくしているのは、技術ではないのかもしれない
DXについて調べていると、たくさんの言葉が出てきます。
経営ビジョン。
DX戦略。
デジタル人材。
ITシステム。
サイバーセキュリティ。
成果指標。
ステークホルダーとの対話……。
「やっぱり難しいな」と思われるかもしれません。
確かに、実際にDXを進めていく段階では、こうしたことも考えていく必要があります。
でも、最初から全部を理解する必要はないと思います。
もっと身近なところから始めてもいいと思います。
例えば、
「この仕事、誰がやっても同じようにできるようにならないかな」
「この集計、毎月やっているけど何とかならないかな」
「この情報、担当者しか分からないのはまずいよね」
「この会議、もう少しみんなが意見を言えるようにならないかな」
そんなところからでもいいのです。
そこに課題があれば、
「ITで解決できないか?」
「AIならできないか?」
と考えてみる。
それがDXにつながっていくこともあります。
「DXをしなければ」から始めない
DXという言葉が広がると、
「DXをやらなければ」
ということ自体が目的になってしまうことがあります。
でも、それは少しおかしいと思います。
私は40年近く技術者として仕事をしてきました。
その間に、パソコンが登場し、ネットワークが普及し、クラウドが当たり前になり、今はAIが急速に広がっています。
技術は、本当に大きく変わりました。
でも、仕事をする人が考えていることは、案外変わっていません。
「もっと仕事を楽にしたい」
「無駄な作業を減らしたい」
「お客様にもっと喜んでもらいたい」
「社員にもっと力を発揮してほしい」
「この会社をもっと良くしたい」
結局、そこなのではないでしょうか。
技術は、そのための手段です。
DXの第一歩は、「課題を整理すること」
DXだからといって、特別なことを考える必要はありません。
まず、
「今、何に困っているのか」
「本当はどうなってほしいのか」
を考えてみる。
その差を見つける。
そして、
「その差を埋めるために、何ができるのか」
を考える。
その中にITやAIがあれば、使えばいいでしょう。
必要なければ、使わなくてもいいと思います。
私は、それがDXの最初の一歩なのだと思っています。
「DXを進めるには、何を導入すればいいのだろう?」
と考える前に、
「この会社を、どうしたいのだろう?」
と考えてみる。
DXという少し難しそうな言葉も、そこから考えると、意外と身近なものに見えてくるかもしれません。
※この記事では、経済産業省「デジタルガバナンス・コード3.0」の考え方を参考にしています。

