【DX推進の処方箋 第2回】「うちの会社は何から手をつける?」――失敗しない優先順位のつけ方

【DX推進の処方箋 第2回】「うちの会社は何から手をつける?」――失敗しない優先順位のつけ方

これは、ある会社の社長と技術士の、架空の会話です。

社長「前回の話で、DXが単なる『IT導入』や『Excelの自動化』ではないことは分かったよ。」

技術士「はい。手段と目的を分けて考えることが大切だ、というお話でした。」

社長「でも、結局のところ『じゃあ、うちの会社は何から始めればいいの?』と聞かれると、やっぱり分からないんだよ。

技術士「そうですね。DXを始めたいと思ったとき、最初に社長に確認していただきたいことがあります。
それは、『今の会社の、ビジョンは何ですか?』ということです。」

社長「ビジョン?DXを考えるためには会社の将来像を考えないといけないのか?」

技術士「そうです。それが、DXの出発点になります。」

社長「ビジョンとDX・・・、どう紐づければいいのかな。」

技術士「わかりました。では、今日はそのお話をいたしましょう。」

DXのスタート地点は「会社の今」を知り、「未来」を考えること

DXは、単なるシステム刷新や、ITによるコスト削減だけを目的としたものではありません。

今よりも売上を上げたい

今よりも顧客満足度を上げたい

今よりも社員満足度を上げたい

DXは、企業の新たな価値を生み出すための取り組みです。

だから、「企業の向かうべき先(ビジョン)」が重要なのです。

DXを進めようとするとき、多くの人が「どんなシステムがあるのか」「他社はどんなツールを使っているのか」と、外の情報に目を向けがちです。

しかし、最初に見るべきなのは「自社の中」です。

例えば、こんなことを考えてみてください。

  • 会社は、何のために存在しているのか?
  • これから、どんな会社にしていきたいのか?
  • そのために、今の仕事で支障になっていることはないか?
  • その支障の原因は?

こうしたことを一つずつ見ていくことで、改善すべきポイントが見えてきます。

そして、今の状態を知ったうえで、「これから会社をどうしていきたいのか」を改めて考えます。

その差を埋めていくために、仕事のやり方や仕組みを変え、必要に応じてITやAIを活用していきます。

私は、これがDXを考えるときの基本的な流れだと思っています。

最初に確認しておきたい3つの質問

では、具体的に何を考えればいいのでしょうか。

私は、まず次の3つの質問から始めることをお勧めしています。

【問1】会社は、何のために存在していますか?

実は、ここがとても重要です。

例えば、製造業であれば、「顧客の求める商品を、顧客に届ける」ことが、会社にとっての大切な使命の一つかもしれません。

そのためには、受注から製造、検査、出荷まで、さまざまな仕事があります。

つまり、会社には「やらなければならないこと」があります。

では、社長さん。

会社にとって、「やらなければならないこと」は何でしょうか?

【問2】その「やらなければならないこと」を邪魔していることはありませんか?

会社として大切な仕事が分かったら、次に、その仕事を邪魔していることを探してみます。

  • たびたびミスが報告され、顧客に迷惑が掛かっている
  • 納期の遅れと社員の残業が多い
  • ハンコの書類が多く、仕事がなかなか進まない
  • 担当者しか分からない仕事が多い
  • 同じ情報を何度も入力している

こうした問題の中には、仕事のやり方を変えるだけで解決できるものもあります。

一方で、情報をデータ化したり、ITやAIを活用したりすることで、解決しやすくなるものもあります。

ここで大切なのは、いきなりシステム化を目指さないことです。

まずは、「何が問題なのか」を見つけます。

【問3】その問題は、会社として本当に解決しなければならない問題ですか?

ここが、経営者に考えていただきたいところです。

会社には、たくさんの問題があります。

しかし、そのすべてを一度に解決する必要があるわけではありません。

「この問題を解決することが、会社のこれからにとって本当に重要なことなのか?」

それを考える必要があります。

DXは、目の前の困りごとを一つずつ片付けるだけの活動ではありません。

会社が目指す未来に向かうために、どこを変えるべきか。

一つひとつの問題を見ながら、会社全体として何を変えるべきなのかを考えることが、DXのスタートとなります。

「何のシステムを入れるか」より先に考えること

ここまで考えて、ようやく「では、どうやって解決していくか?」という話になります。

そこで初めて、ITツールやAI、業務システムなどが「選択肢」に入ってきます。

例えば、紙の書類が多いことが問題なら、単純にペーパーレス化すればいいとは限りません。

そもそも、その書類を作る必要があるのか。
同じ情報を何度も入力していないか。
承認の方法を変えられないか。

こうしたことを考えたうえで、必要ならITを使います。

「ITを導入するために仕事を変える」のではなく、「仕事を良くするためにITを使う」。

前回お話しした「目的と手段を分ける」ということは、ここにもつながっています。

今回のまとめ

DXというと、どうしても「新しいシステム」や「AI」といった技術の話から始めたくなります。

でも、本当に最初に必要なのは、もっとシンプルなことなのかもしれません。

「今、うちの会社はどこにいるのか?」

そして、

「これから、どこへ行きたいのか?」

その2つを考えること。

そして、その実現のためにITやデジタルを活用すること。

次回は、「ビジョンは決めた。では、どこから手をつけていくか?」という疑問について、一緒に考えていきたいと思います。

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