【組織づくりの処方箋 第6回】「もっと自主的に動いてほしい」と思ったときに、まず見直すべきこと

「最近の若い社員は、自分から動かないんですよ」

そんな話を聞くことがあります。

「言われたことはやる。でも、その先を考えない」

「もう少し、自分から動いてほしい」

経営者や上司からすると、そう思ってしまうのも無理はありません。

でも、ちょっと考えてみたいことがあります。

その社員は、これまでに「自分で考えて、自分で決めて、動く」という経験をしてきたのでしょうか。

「目的を伝えれば動く」とは限らない

「若い社員がなかなか自分から動かない」。

それについて私は、最初、

「もう一度、仕事の目的を明確に伝えればいいのではないか」

と考えていました。

仕事の目的を知ることは、とても大切です。

なぜ、この仕事をするのか。
誰の役に立つのか。
何を目指しているのか。

それが分からなければ、自分から考えることも難しくなります。

ただ、目的を理解したからといって、すぐに自分から動けるようになるとは限りません。

学校を卒業して会社に入ったからといって、すぐに「仕事をする」ということを理解できるわけでもありません。

アルバイトなどを通じて、働くことを経験してきた人もいれば、そうした経験が少ない人もいます。

だから、

「目的を説明したんだから、自分から動くだろう」

と考えるだけでは、少し無理があるのかもしれません。

必要なのは、自分で考えて、判断して、行動する経験なのではないでしょうか。

仕事が遅れないことと、仕事を管理できることは違う

もう一つ、気になったことがあります。

上司が、社員が失敗しないように先回りしていることです。

仕事の進み具合を確認する。
期限が近づけば声をかける。
遅れそうなら手を入れる。

そうすれば、仕事は終わります。

思えば、私自身も、以前はそうしていました。

もちろん、仕事を遅らせないためには必要なことです。

でも、ここには一つ落とし穴があります。

本人からすると、

「期限までに仕事を終えた経験」はあっても、「自分で期限を管理した経験」はない。

ということです。

これは大きな違いです。

仕事が遅れなかったからといって、本人が仕事を管理できるようになったとは限りません。

上司が管理してくれていたから、遅れなかったのかもしれないからです。

「自分で優先順位を決める」経験

例えば、こんな状況を考えてみます。

上司から仕事を頼まれているところに、別の部署の人から、

「これ、お願いね」

と言われた。

さて、どちらを先にやればいいのでしょうか。

今日中なのか。
明日でもいいのか。
今やっている仕事より優先するのか。
そもそも、自分で決めていいのか。

分からなければ、上司に聞くしかありません。

そして毎回、

「どれからやればいいですか?」

と聞いていると、本人は自分で優先順位を決める必要がなくなります。

上司が決めてくれるからです。

もちろん、最初はそれでいいと思います。

分からないことを相談するのは、悪いことではありません。

問題は、いつまでも上司が決め続けてしまうことです。

それでは、いつまでたっても、

「自分で仕事を判断する経験」

が積み上がりません。

フォローすることと、代わりに判断することは違う

ここが、今回一番お伝えしたいところです。

「じゃあ、若手に任せて、放っておけばいいのか?」

もちろん、違います。

仕事を任せた以上、上司がフォローするのは当然です。

困っていたら相談に乗る。
大きな問題になりそうなら止める。
必要なときには助ける。

でも、

本人が考える前に、上司が全部決めてしまわない。

ここが大切なのだと思います。

例えば、

「この仕事、どう進めたらいいですか?」

と聞かれたときに、

「じゃあ、こうして。期限は○日。次はこれをやって」

と全部答えてしまう。

これでは、上司が仕事を管理しているだけです。

そうではなく、

「あなたはどうしたらいいと思う?」

「いつまでならできそう?」

「今の仕事と比べて、どちらを優先する?」

と聞いてみる。

もちろん、本人の判断が間違っていることもあります。

そのときは、理由を伝えて修正すればいい。

大事なのは、本人が一度、自分で考えて判断することです。

「任せる」とは、仕事を渡すことではない

前回、「任せる」ということについて考えました。

今回、もう一歩踏み込んでみたいと思います。

仕事を任せるというのは、単に作業を渡すことではないのではないでしょうか。

その仕事について、自分で考え、判断する部分まで渡すこと。

例えば、

「この仕事をお願いします」

だけではなく、

「いつまでに終わらせるかは、まず自分で考えてみて」

「他の仕事と重なったら、優先順位を考えてみて」

「判断に迷ったら相談して」

そんなふうに、仕事の中に「自分で決める部分」をつくる。

これが「任せる」ということなのかもしれません。

「誰が任せるか」より、大切なこと

もちろん、誰から仕事を頼まれるかによって、受け取る側の気持ちが変わることもあります。

課長や主任から、

「この仕事をあなたに任せます」

と言われれば、

「自分の仕事なんだ」

と感じやすいでしょう。

一方で、先輩から、

「これ、お願いね」

と言われると、

「頼まれただけ」

と感じることもあるかもしれません。

ただ、私は「誰が任せるか」だけが問題ではないと思います。

それ以上に大切なのは、

その仕事について、本人にどこまで責任と判断の範囲が渡っているか。

ではないでしょうか。

誰から頼まれた仕事であっても、

「ここまでは自分で決めていい」

「この場合は相談してほしい」

「この期限までに、自分で計画して進めてほしい」

となっていれば、そこには「任されている」という感覚が生まれやすくなります。

失敗しないことが、本当にいいことなのか

上司が先回りする理由は、よく分かります。

失敗してほしくない。
仕事を遅らせてほしくない。
周りに迷惑をかけてほしくない。

だから、つい手を出してしまう。

私自身も、そうしてきました。

でも、仕事を覚えていく中では、

やってみる。
うまくいかない。
考える。
やり方を変える。
そして、できた。

という経験が大切なのだと思います。

もちろん、大きな失敗をさせればいいという話ではありません。

取り返しのつかない失敗を防ぐのは、上司の仕事です。

でも、本人が考えて判断できる小さな範囲まで、すべて先回りしてしまうと、

「自分で考えて、自分で決めた」

という経験までなくなってしまいます。

「みんなで楽しく仕事をしたい」

以前、私は、

「みんなでワイワイ楽しく仕事をしたい」

と思っていました。

でも、任せてもなかなか進まない。
報告も来ない。
こちらから確認しないと、状況が分からない。

そんなことが続けば、楽しいどころではありません。

本人も苦しいでしょう。

周りも気を使います。

そして、上司はどんどん仕事を細かく管理するようになる。

すると本人は、ますます「言われたことをやる」だけになる。

もしかすると、そんな循環ができてしまうこともあるのではないでしょうか。

社長、「自主性」を求める前に

「もっと自主的に動いてほしい」

そう思ったとき、一度だけ考えてみてください。

その社員には、

自分で仕事の優先順位を決めた経験がありますか?

自分で期限を考えたことがありますか?

自分で判断して、うまくいかなかった経験がありますか?

そして、

「この仕事は自分に任されている」と感じたことがありますか?

もし、そうした経験が少ないのであれば、

「自主的に動いてほしい」

と言う前に、会社の側が、

「自分で考えて、判断できる仕事」

を渡せているかを考える必要があるのかもしれません。

自主性は、

「持っている・持っていない」

という性格の問題だけではないのだと思います。

「自主的に動く」とは、勝手に動くことではない

最後に、もう一つ。

「自主的に動く」という言葉から、

「勝手に動かれると困る」

と思う方もいるかもしれません。

その通りです。

会社の仕事で、何でも勝手にやられては困ります。

私が考える「自主的に動く」とは、

自分で考え、自分で判断し、必要なら相談しながら行動すること。

です。

だからこそ、

「任せる」と「放っておく」は違います。

支える。
相談に乗る。
必要なら止める。

でも、本人が考える前に、すべてを決めてしまわない。

その中で、少しずつ本人に判断を渡していく。

その経験が、

「これは自分の仕事だ」
「自分で考えていいんだ」
「自分で決めていいんだ」

という感覚につながっていくのではないでしょうか。

「最近の若い社員は、自分から動かない」

そう感じたとき、

本人に問題があると考える前に、本人が「自分で動く経験」を会社がつくっているか。

一度、考えてみてもいいのではないでしょうか。

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